OVAの歴史や背景とは。何でOVAってあるの?

アニメファンなら半ば常識のように認知しているOVA。 黎明期にはOAVなんて呼ばれ方もしていたのでオールドアニメファンにとってはそっちの呼び方のほうがしっくり来る方もいるかもしれませんが、時代とともに呼び方はOVAへと移行しました。 ここでは知っているようで知らない、OVAの誕生から現在までの流れをまとめました。

OVAってどういう意味?

OVAはOriginal Video Animation、Original Visual Animationの略称となっており現代では「オリジナルビデオアニメ」と呼ばれる事が一般化しています。口に出す時は普通にそのまま「おーぶいえー」ですが、OVAが誕生して間もない頃はOAVの呼称が広く定着していました。

…が、OAVだと成年向けビデオのAVや音響・映像のAVと混同する、などの事情から徐々に名称はOVAへと推移します。

日本における「アニメ作品」とはテレビで放映するor映画館で上映するもの(またはそれらの放送・上映後にVHSカセットやレーザーディスクなどで販売)でしたが、そのいずれでもなくはじめからビデオ(VHS)での販売orレンタルを目的としたアニメ、それがOVAです。

1983年、OVA誕生

日本で…と言うより、世界ではじめてOVA形式のアニメが登場したのは1983年の「ダロス」(鳥海永行・押井守両名による監督作品)と言われています。

当時は通常のVHS形式の映画が平気で1万円を超えて販売されていた時代でしたが、そこに来て「ダロス」の6800円での発売は革新的であり(後発のOVA作品はもっと高いです)、また年を追うごとに家庭用ビデオデッキの普及率が高まった事により制作されるOVAはその本数を増やしていく事になります。

「ダロス」は革新的でしたが基本的に黎明期のOVAは他の映像作品と同じく1本1万円は当たり前の状況だったので購買層は大人に絞られていき、いわゆる「オタク層」をターゲットにしたOVAが増加しました。

ちなみに、黎明期のOVAは1巻あたり60〜90分ぐらいの作品が多く、現代のような感覚とはちょっと違っているのが特徴的ですね。

黎明期のトレンドはSF&美少女

前記した通り、1983年に誕生したOVAですが依然として主役はTV放送。
80年代のOVA作品は特にマニア向けと言われる凝った設定のSF作品やオタクが好む美少女作品が主流でした。

マクロスシリーズのスタッフが再結集しOVAとしては大ヒットを記録した「メガゾーン23」、SFファンタジー作品としてこちらも大ヒットの「幻夢戦記レダ」はOVA黎明期を語る上で不可欠な存在であり、このようなSF作品がOVAの主役となっていきます。

劇場版「宇宙戦艦ヤマト」などの大ヒットでアニメはもはや子どものものだけではなくなっており、ディープなアニメファンはそんな大人向けのアニメを望んでいた状況と重なりOVA界は活気づきました。

OVAのもう1つの顔

1984年、一部アニメファンが熱望して止まなかったとあるOVAが発売されます。

その作品の名は「くりぃむレモン」。

18才以上のみが購入できる性描写を含んだ成人向けアニメはこれ以前にも存在していましたが、特にこの作品は幼女趣味のある人間をピンポイントで狙った作品であり何かと物議を醸した作品です。

こちらの作品も発売からまもなくレンタルショップの18禁コーナーに置かれるなど一定以上の需要があり、こっちはこっちでOVAのもう1つの「可能性」として独自の進化を遂げる事となります。

放送コードが存在するテレビでは放送できないような内容でもOVAならばできる事は多いです。

テレビ放送では人気獲得が難しそうな大人向け漫画をOVA化するなど実験的な試みも行われるようになり、OVAはテレビ作品とは全く別の道を歩み始めます。

OVAのメリット・デメリット

ここまで1980年代、OVA黎明期の話をしてきましたが、そもそもOVAのメリット・デメリットとは何でしょうか?

前述した通り、視聴者側とすればマイナーな作品でも映像化してくれるのがありがたいので喜んで飛びつく、または特殊な性癖を持っているためにそこをはけ口として飛びつく、などありますがやはりネックとなるのはその値段。

今でこそマシになりましたが、昔は平均的に1本あたり1万円を超えていますからおいそれと何本も買うことはできないですし(当時なら尚更)、レンタル需要が高まるのも自明の理でしょう。



制作側の立場からすると週1のテレビ放送のように納期に追われる事は少ないのでクオリティの高い作品をじっくり作れる、テレビのように煩わしい制約が存在しないのでクリエイターとして本当に作りたいものを形にできる、など、大きなメリットがあります。

反面、テレビアニメや大作劇場アニメのように広告費には資金は使えないので本当に良い作品でないと知名度が全く上がらず…何て事が頻発しました。

基本的にはTVアニメと同じくスポンサーに資金を貰って制作という形が一般的ですが、中にはスポンサーがつかなかったために1本あたりの販売価格が高くなったケースも存在するなど、金策も簡単な話ではなかったようです。

「観る楽しさ」と「コレクションする楽しさ」

90年代に入ると家庭用ビデオデッキの普及率は7割近くまで上昇。
各家庭にはだいたい存在する家電品として定着しましたが、そんなビデオデッキの普及と前後してアニメ業界でも革新的なアニメシリーズがスタートしました。

それは1988年より展開する「機動警察パトレイバー」シリーズ。

最初はOVAとして発売された「機動警察パトレイバー」の価格は驚きの4800円。
その当時はまだ1万円近いOVAが普通の時代でこの価格は脅威と言う他ないです。

これには作中にCMを挟むなど様々なコスト対策を施してあり、その低価格も手伝い本シリーズは大ヒットを記録。
TVアニメ化、劇場アニメ化、プラモデル化…と様々な媒体でも成功を収めた「機動警察パトレイバー」はメディアミックス戦略の先駆けとして今も高い人気を誇る名作としてたくさんのファンに愛されています。

このヒットを契機に値段を抑えめに制作されたOVAも増加。

これにより、その高価格から簡単に買うことができず、レンタルで視聴していたアニメファンは観る楽しみに加えて収集する楽しみを新たに見出していく事になります。

深夜アニメの台頭とオリジナル作品の減少

90年代後半になると深夜帯に放送するいわゆる「深夜アニメ」が増加し、そのようなアニメのほとんどはかつてOVAが狙っていたオタク層をターゲットにしているモノでした。

当初はソフト販売による制作資金の回収しかビジネスモデルが存在しなかったOVA界に比べ、テレビという強力で、しかもタダで観れる深夜アニメが関連キャラクターグッズやソフト販売で資金回収するというビジネスモデルを確立してからは制作本数も減っていき、結果的に誕生当初の意味でいう「OVA」は減少。

どぎつい残酷描写が多数盛り込まれたアニメなども深夜アニメに増えてきていますが、それでも満足できない方は今もそのようなニッチな需要を満たすOVAを視聴していますが…様々な規制も多くなった現在この先、どうなるのでしょうか?

こうしてみてみると転換点には押井守監督が関わった作品が存在し、作品としての評価だけでなく新たな可能性を切り拓いたという点でもアニメ史に残る人物かもしれませんね。

また、DVDやブルーレイディスクが主流となった現在もOVAの名は残っていますが、書店などではOAD(Original Animation Disc)として単行本や雑誌の特典としてついてくるモノも存在します。

果たしてこの呼称と商法はこれから先も続いていくのでしょうか?

OVAの歴史やその推移のまとめでした。

エムキャス